人前で話すと赤面してしまう、顔が赤くなるのが気になって人と話すのに抵抗があるなどの悩みがある方、どうにかして治すことはできないかと一度は考えられたことがあると思います。
果たして赤面症は薬で治るのか?この疑問は筆者自身が赤面症であることもあり、この記事を作成する上で、私自身も思いましたし、赤面症でお悩みの方も同じく感じられているでしょう。
赤面症が生じる原因のほとんどは、主に対人における緊張です。一人で自宅で過ごしている時に何もなく突然赤面してしまうことはないですよね?
赤面症は対人恐怖症に現れる代表的な症状のひとつです。
赤面症は不安や緊張などの精神的な問題が原因で引き起こされる神経疾患であり、主な治療方法として薬物療法と精神療法があります。
薬物療法では、この不安や緊張を緩和する効果のある薬が用いられます。薬によっては即効性があるものもあり、すぐにでも症状を改善したいという方などもお試しいただく価値はあるかと思います。
この記事では赤面症の薬物療法で処方される2つの薬についてご紹介します。
1. 薬で赤面症は改善できるのか?
薬物療法では不安や緊張に伴う症状の多くは比較的改善します。
しかし赤面症の場合は薬では根本原因である対人関係そのものを解決することはできません。
従って、対人不安によって生じたこれらの症状に対する薬の効果には、限界もあります。このことを十分に理解した上で薬を利用することが大切です。
赤面症の治療方法としては薬物療法のみでの治療を行うよりも精神療法を行いながら、サポート的に薬物療法を用いることが多いです。
薬物療法用いられる薬には、向神経薬と漢方薬の2つがありますのでそれぞれの薬の効果や特徴についてお話しします。
2. 赤面症の治療薬は向神経薬と漢方薬の2つ
2-1. 向神経薬
向精神薬とは、文字通り精神に向かう薬のことを指します。つまり精神へと作用する薬のことです。
かなり幅広くはなりますが、精神へと作用するお薬に関しては、すべて向精神薬と呼ばれます。精神科などで使われている薬に関しては、基本的に向精神薬です。
その中でも一般的に、精神疾患の治療に使われる向精神薬には、たくさんの種類がありますが大きく分けて5つの種類があり、赤面症の治療に用いられることが多いのが、抗うつ剤、抗不安薬の2種類になります。
赤面症治療で向神経薬を用いての薬物療法では、抗うつ剤のSSRIと抗不安薬を使って治療する事が一般的です。
抗うつ剤
抗うつ剤は、文字通りうつ病の治療薬として使われる向精神薬になります。うつ病の他にも、強迫性障害やPTSD、不安障害などの治療薬としても使われます。
不安障害にもいくつか種類があり、パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害などが挙げられます。
赤面症の薬物療法に用いられる抗うつ剤は不安や緊張をやわらげる効果のあるSSRIが一般的です。
セロトニン神経系と呼ばれる脳内の神経系に働きかけ、その機能をサポートし、ストレスから守ってくれる薬だと考えるといいでしょう。継続的に服用することで、徐々にセロトニン神経系の働きを正常化していきます。
また、SSRIを含む、SNRI、NaSSAの3つは、新規抗うつ剤と呼ばれており、安全性が比較的高いとされています。そのため、最初に使われる抗うつ剤です。
【メリット】
SSRIなどの抗うつ剤は比較的安全性が高く、1~2週間で効果が現れ、2~3ヶ月後に症状が改善するといわれています。
【デメリット】
薬によって副作用は異なりますが、性機能障害、開始直後から最初の数週間にみられる不安・興奮・不眠。その他腹痛、吐き気、下痢などの症状を服用を始めて数週間続くことがあります。
また頻度は低いですが、SSRIで頭痛が起こることがあります。
体調以外にも、むくみやすくなったり、摂取カロリーが増加する傾向になることから体重は増加します。
中止後は1,2か月で戻りますが、摂取カロリーが多くなりやすい生活習慣になってしまった場合には、厳格にダイエットを行わなければならない場合もあります。
一方で、SSRIやSNRIでは飲み始め数か月は痩せる方向に作用することもありますが、結局長期に服用すると太ります。
そしてほとんどの抗うつ薬には鎮静作用があり、これが眠気を誘発します。
カフェインを意識的にとって対抗しようとする人もいますが、カフェインは過剰にとると、かえって起立時のめまい(起立性低血圧)を増加させる別の症状につながることがあるので注意が必要です。
抗うつ剤を2か月以上飲んでいる場合や、代謝されて身体からでていきやすいようなお薬の場合、断薬や減量によって興奮、吐き気、不安定、不機嫌、思考の障害などの症状が出る中止後発現症状(離脱症状)もあります。
抗うつ剤の減薬には、できるだけ時間をかけるのが安心です。
以上が主な副作用ですが、薬によっては上記以外の副作用が出ることもありますので服用前に医師に確認をしましょう。
抗不安薬
抗不安薬とは、不安を和らげる作用を持つお薬のことです。
また、不安の他にも緊張や恐怖にも作用します。パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害などの不安障害の治療やその他の精神疾患などにも用いられる薬です。
抗不安薬として現在主に用いられているのは、『ベンゾジアゼピン系』と呼ばれるものになります。
このベンゾジアゼピン系抗不安薬は、しっかりと不安を抑えてくれる作用があります。
代表的なベンゾジアゼピン系抗不安薬を挙げると、
- デパス(エチゾラム)
- ソラナックス(アルプラゾラム)
- ワイパックス(ロラゼパム)
- レキソタン(ブロマゼパム)
ソラナックスは服用後すぐ効果が現れ、そのかわり効果の消失も早いので、1日3~4回の服用が必要です。
抗不安薬は不安を抑える作用以外にも「筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる)」「催眠作用(眠くする)」「抗けいれん作用(けいれんを抑える)」といった作用もあり、これらの作用も役立つことがあります。
このようにさまざまな作用があるため、抗不安薬は抗不安作用以外の目的としても用いられることが多いです。
【メリット】
効果が高く薬によっては、即効性のあるものがある。不安を抑える作用以外にも筋肉の緊張を和らげるなどの作用もある。
【デメリット】
長期間あるいは多量の使用を続けていると耐性や依存性が生じる可能性があります。また、作用によって眠気やふらつき、物忘れが出てしまう可能性があり、特に高齢者では注意が必要です。
眠気、ふらつきは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬に見られる最も多い副作用です。
眠気については、薬を続けているうちにだんだん慣れてきて、日常生活に支障が出るほどではありません。
それでも眠気が強い場合は、量を減らすか、就眠前に服用するか、他の薬に変更します。
眠気までいかなくて、ぼんやりした感じ、注意散漫、集中力低下などが出る場合もあり、自動車の運転はひかえなければなりません。
ふらつきは筋弛緩作用によるものです。
お年寄りの場合は転んで骨折したりしないように気をつける必要があります。単なるふらつきでなく、運動失調やろれつがまわらなくなったりすることもあります。
逆に、筋緊張性頭痛、肩こり、腰痛などは、筋弛緩作用によって改善することがあります。
そのほか、脱力感、疲労感、倦怠感(だるさ)なども、薬の服みはじめによく見られます。薬を続けていても軽快しない場合は、やはり減量や他剤への変更で対処します。
市販薬
市販薬でも赤面症に効果のあると言われている薬があります。それは「イララック」です。
イララックは、高ぶった神経を落ち着かせ、気持ちをおだやかにする市販薬の医薬品です。
植物由来の生薬エキスがいらいら感・興奮感・緊張感の鎮静させてくれることから赤面症にも効果的と言われています。
しかし、長期間の使用はNGです。5~6日間服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、製品の添付文書を持って医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
市販薬は一時的な症状を抑えるには良いですが、根本的な改善にはならないので、赤面症自体を治したい場合はおすすめはできません。
2-2. 漢方薬
漢方薬とは自然界の動植物や鉱物などの生薬を東洋医学の長い経験と実践をもとに配合したものです。
東洋医学の基本理念にもとづいて処方される漢方薬の多くは、体の表面にあらわれる症状に対応しながら、体質そのものを改善して病気を治そうというものです。
慢性疾患では服用後約2週間、急性疾患では服用後1〜2日で改善がみられるかどうかを目安に、医師が患者の体にあった他の薬に変えるかどうかを指示することが多いです。
漢方薬を処方した医師に指示された期間服用しても症状の改善が認められない場合には必ず医師に相談しましょう。
漢方薬には、患者ひとりひとりの体力や体質、あらわれている症状に合わせてそれぞれに対応する薬の処方が異なるという大きな特徴があります。
例えば、頭痛の治療薬を処方する場合でも体力のある人とない人、太っている人と痩せている人など、体力や体質によって処方される薬は様々に異なります。
症状については、頭痛・腹痛などの局所的な症状はもちろん、疲れやすい、汗が出る、顔色が悪いなどといった体全体の症状も考慮されて処方が決まります。
自律神経失調症などに使用されている漢方処方は、応用範囲がとても広く、大変便利で、パニック症や多汗症、起立性調節障害・抑うつ病・不眠症・メニエール・更年期障害・赤面症など、幅広く利用可能です。
自分にはどの漢方薬が向いているかどうかは、専門医や漢方医に選んでもらい服用することをおすすめします。
【メリット】
表面上の症状だけでなく、根本的な体質そのものを改善することができる。
医師が個々の患者の体力や体質、症状を正しく判断し、それにもとづいた漢方薬を正しく用いることで、治療効果がいっそう上がることが期待できる。
【デメリット】
漢方薬は自然の生薬をに混ぜ合わせてつくられているため、一般に副作用は少ないと言われています。
ですが体力や体質、症状に合わない薬を服用して思わぬトラブルが起こることもあれば、毒性の強い生薬の入った薬を用いたために起こることも少なくないので、服用の際は注意が必要です。
赤面症の治療で処方される漢方薬を参考までにご紹介。
加味逍遥散症(かみしょうようさん)
《成分》
当帰・芍薬・柴胡・蒼朮または白朮・茯苓・薄荷・甘草・牡丹皮・山梔子・生姜
《向いている人》
体力・体質共に虚弱な女性の、月経不順、月経困難、更年期障害、冷え性、便秘のほか、虚弱体質そのものの改善など。
主に肩こり、疲れやすい、頭痛、のぼせ、精神不安、倦怠感などの精神症状がある場合に用いられます。
更年期障害のファーストチョイスに加味逍遥散というくらい、あまりにも有名な漢方処方で、職場の人間関係などによるストレスなどに、加味逍遥散が随分助けてくれます。
漢方的な治療法は、停滞している“気・血・水”の流れをよくすることで、精神神経状態を落ち着かせ、血液循環を改善し、清熱作用で上半身の余分な熱(のぼせ傾向)を取り去ります。
ホルモンバランスを整え、生理不順や生理痛・イライラしたり怒りっぽくなる・やる気の低下・めまいやフワフワ感・動機・上半身が熱くなるのぼせ傾向や発汗・寝つきが悪い・多汗症・赤面症・不眠症・不安感・抑うつ状態・焦躁感・頭痛・肩こり・倦怠感・多汗症・赤面症・ニキビ・慢性肝炎・子宮筋腫・不妊症・自律神経などの症状・病気にまで適応します。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
《成分》
黄連・王柏・山梔子・黄芩
《向いている人》
比較的体力があり、のぼせぎみで顔色が赤く、イライラなどの精神症状がある場合の、吐血、鼻血、下血、脳出血、高血圧、ノイローゼ、不眠症、動悸、皮膚そう痒症に幅広く応用されています。
清熱解毒の代表的漢方処方黄連解毒湯。
上半身の余分な熱を取り去り、脳卒中・精神不安・焦躁感・赤面症・多汗症・痔出血・アトピー性皮膚炎などにも効果があります。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
《成分》
半夏・茯苓・厚朴・生姜・蘇葉
《向いている人》
不安神経症、神経性胃炎、せき、つわり、不眠などで気分がふさいだり、食道部に異物感があったり、時に動悸やめまい、吐き気などを伴う場合。
滞っている“気”の流れを良くしたり、発散したりして、“気”の滞りを改善します。神経をしずめ、心と体の状態をよくします。また、咳や吐き気を抑える作用もあります。
滞っている“気”の流れをよくしますので、気分がふさいだ方の抑うつ状態や不安神経症・多汗症・赤面症・精神不安・不眠症・無気力・恐怖感・ノイローゼ・動悸・更年期障害・神経性胃炎・しわがれ声・心臓喘息・つわり等の症状・病気を改善。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
《成分》
芍薬・桂皮・大棗・甘草・生姜・竜骨・牡蛎
《向いている人》
体力が虚弱で疲れやすく興奮しやすい人の、神経症、不眠症などの精神神経症状。また眼精疲労の子どもの夜泣き、夜尿症などにも用いられます。
神経の高ぶりを鎮め、また、気力をつけることで心の状態をよくします。
体質の虚弱な方で、体が疲れやすく、興奮して眠れないというときに用いられ、臍部辺りの動悸の自覚がよく効く目安で、神経衰弱・心悸更新・性的ノイローゼ・更年期障害・不眠症・チック症・うつ病・高血圧・動脈硬化・脳血管障害・認知症などに応用可能です。
さらに多汗症・赤面症・脱毛症・小児夜泣き・眼精疲労・夢精・発作性頻脈・自律神経失調症・統合失調症などにも応用できます。
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
《成分》
大黄・黄芩・黄連
《向いている人》
比較的体力がある人の、のぼせ、肩こり、不眠症、精神不安、高血圧症、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、月経不順、月経困難など。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
《成分》
柴胡・黄芩・活楼根・桂皮・牡蛎・甘草・乾姜
《向いている人》
体力が弱く、冷え性、貧血気味で、動機や息切れがあり、神経過敏の傾向がある場合の、更年期障害、月経不順、月経困難、神経症、不眠症など。
気血の流れを良くし、体の熱や炎症をひき、また、緊張をゆるめて神経の疲れを癒し、貧血気味な方の動悸・息切れ、心と体の状態をよくします。
繊細で神経過敏な方の多汗症・赤面症・慢性肝炎・慢性胃腸炎・胆のう炎・気管支喘息・インフルエンザ などにも用いられます。
3. まとめ
赤面症の薬物療法に用いらる2つの薬についてご理解いただけましたか?
実際にどの薬が自身に合うのかというのは自己判断はできません、医師の診断のもと処方してもらうのが一番です。
赤面症でお悩みで、それがストレスになっていたり、自信を失ってしまっている方は一度精神科を受診をしてみてはいかがでしょうか?
ですが、文中でもお伝えしたように赤面症は精神的な問題が原因によって引き起こされる症状なので、薬物療法のみに頼らず、並行して精神療法を行うことでより高い効果が得られます。
薬物療法一択になるのではなく、医師の指示に従い、カウンセリングをした上で自分にあった正しい治療方法から試してみることをおすすめします。
赤面症の治し方についての詳しい記事はこちら
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