【医師監修】「酒さの原因」医師に相談前に知っておきたい基本知識

【監修】三宅 真紀先生

頬の赤みが気になる

鼻の頭や頬が赤くなったままいつまでも治らない。しかもだんだん赤い部位が広がってきた気がするし…、湿疹もできた。ニキビ?アトピー?それとも何かの皮膚炎?

と迷ったときは、「酒さ」を疑ってみるべきかもしれません。

「酒さ」は慢性皮膚疾患のひとつで、20代~60代の幅広い層に見られますが、特に発症しやすいのが、中年以降の女性だとされています。

鼻、頬、額、口まわりなど、顔面に赤みやほてり、かゆみなどが出て、長期間にわたって赤みが引かないことがその特徴です。

寒いところから温かい室内に入ったときなど、顔が上気して赤くなることがありますが、これは頬などの毛細血管が拡張するからです。酒さは、この毛細血管の拡張が戻らなくなってしまう炎症性のトラブルで、赤くなっている部分をよく見ると、血管が絡みあうようになっているのがわかります。

酒さは診断が難しく、医師であっても診断が難しいと言われています。原因や因果関係が解明されておらず、複数の原因が合併して発症することも多いためです。そのため酒さと診断されても、改善までに時間がかかることもあるようです。まずは、自分の症状や可能性のある原因などを把握したうえで、医師の判断を仰ぐことが、自分に合った改善策が見つかりやすいと考えられます。

また、お酒を飲んだときのような赤ら顔になることや、お酒という文字が入っていることから、飲酒と関係があるかのような印象がありますが、酒さとお酒は無関係です。

1. 酒さの原因

1-1. 酒さの原因は?

気になる酒さの原因ですが、はっきりとした因果関係は解明されていません。

というのは、酒さそのものの認知度が低いだけでなく、どの段階からの赤ら顔を酒さとするかの診断基準が明確でないため、原因もはっきり断定できないという事情があります。

さらに、ニキビやアトピー性皮膚炎、化粧かぶれ、ステロイド依存による酒さ様皮膚炎、脂漏性皮膚炎などが合併し発症することも多いのですが、この場合もどこからが酒さで、どこからがその他の疾患なのかの診断基準、そして治療ガイドラインもないというが日本の現状です。

ということで、酒さの原因以前に、酒さそのものが何なのか?という共通見解がまだないのが現状です。

1-1-1.  酒さのきっかけ

毛細血管が拡張し、皮膚の上から血管が透けて見えることが「赤ら顔」の原因ですが、酒さも同じです。室外と室内の寒暖差、お風呂上り、陽にあたる、アルコール、運動、笑う、緊張する、ストレス、食事をするなど、血流がよくなり顔が上気することは、毛細血管を拡張させます。

通常は、時間が経てば血管が収縮して、顔の赤みが消えますが、酒さの人は、なんらかの要因で血管が収縮しないまま赤ら顔が続いてしまうのです。

血行がよくなるこれらの行動は酒さの原因とは言えませんが、酒さを引き起こすきっかけになる場合があります。

1-1-2. 刺激とアレルギー

肌になんらかの刺激が与えられたとき、髪やタオルなどによる接触性の皮膚炎の他、化粧品かぶれ、日光アレルギーや金属アレルギー、食物アレルギーなどの炎症も酒さの原因となることがあります。

1-1-3. 更年期との関係

酒さは中高年以上の女性が発症することが多いため、更年期と関係があるという説もあります。女性ホルモンの急激な減少は、皮脂の分泌を盛んにさせるので、皮脂腺に栄養を運ぶために、毛細血管が拡張するし、それが酒さの原因になる可能性があるとされています。

1-1-4. 血管収縮異常

酒さは偏頭痛との合併が多いことから、血管収縮運動の異常も考えられます。血管が拡張したまま、収縮しなくなる原因はよくわかっていませんが、ヒスタミンやカフェイン、セロトニンなどの血管を拡張、縮小させる成分は酒さを悪化させやすいといわれています。

1-1-5. ニキビ菌・顔ダニ

そのほかにニキビ菌が関係しているという説、ニキビダニとも呼ばれる顔ダニの1種が原因という説もありますが、はっきりとしたことはまだわかっていません。

以上、酒さを発症するきっかけと5つの考えられる原因を挙げてみました。しかし、現実は2つ、3つの原因が複雑に絡み合っていることの方が多いと考えられます。

 

1-2. 酒さに注意したい2つの肌タイプ

1-2-1. 敏感肌

では、どんな人が酒さになるのでしょうか?酒さが炎症性のトラブルであるということは、酒さの人は顔の皮膚バリア機能が低下した敏感肌の可能性が高いと考えられます。

肌表面には異物や侵入や刺激を防いでくれる、皮脂膜と、角質層の細胞間脂質の2重のバリアがありますが、肌乾燥や皮脂不足からこの2つのバリアが乱れ、機能低下になっているのが「敏感肌」です。

敏感肌はバリア力が低いので、紫外線やアレルゲン物質、雑菌が入り込みやすい他、毛髪や化粧ブラシ、タオルなど刺激にも反応しやすく、そのことから炎症を起こして酒さになる可能性が高まります。

肌バリア図

1-2-2. アトピー肌・ニキビ肌

酒さはアトピー性皮膚炎やニキビなどの湿疹と合併することが多くあります。アトピーやニキビの赤みが、酒さへと進むこともあれば、酒さによってアトピーやニキビが発症されることもあります。炎症による赤ら顔が熱を持ち、肌の水分が蒸発して肌乾燥がひどくなることから、湿疹が生じるとわれています。

1. 酒さの症状と進行

毛細血管が拡張酒さの症状は程度によって1度から3度の3段階に分けられます。必ずしも1度から2度、3度へと進行するわけではなく、人によってはいきなり3度から発症する場合もあります。

2-1. 紅班性酒さ(1度)

酒さは、鼻、額、頬などに原因不明の赤みが表れ、なかなか消えないことから始まります。拡張した毛細血管が肌の上から透けて見えることや、ほてりを感じることがありますが、症状としてはいちばん軽いものです。

2-2. 酒さ様ざ瘡(2度)

紅班性酒さ(1度)に加えて、湿疹が表れるのが酒さ様ざ瘡(2度)です。一見すると大人ニキビのように見えます。化膿して膿疱ができることもありますし、この頃になると症状の表れる部位が拡大していきます。

2-3. 鼻瘤(3度)

鼻瘤(3度)は、膿疱が悪化して、鼻にボコボコとしたコブができた状態です。鼻全体が赤くなり、毛孔は開き、炎症を繰り返すことで、肌が固くなります。鼻瘤は遺伝体質、血管運動神経の障害、脂漏が原因で、飲酒や胃腸 トラブルが誘因になるとされています。

3. 酒さと間違いやすい皮膚炎は?

酒さと症状が似ているけど、原因や治療法が違うものとして、次の2つがあります。

3-1. 酒さ様皮膚炎(ステロイド性皮膚炎)

酒さと症状がとても似ている、酒さ様皮膚炎は、副腎皮質ステロイド剤を長期間にわたって使用したためにおきる副作用です。原因がステロイド剤だとわかっているので、ステロイド剤をやめることが改善の条件となります。

実際には、「酒さ」と「酒さ様皮膚炎」、2つの皮膚炎が混在している場合もあり、「酒さ」と「酒さ様皮膚炎」を見分けることはかなり困難です。ステロイドを使用し続けても改善が見られず、逆にステロイドをやめたら急に症状が悪化したら、「酒さ様皮膚炎」。ステロイドをやめても、症状が変わらないなら「酒さ」と判断されることが多いようです。

「酒さ様皮膚炎」は、ステロイドをやめると症状が急激に悪化しますが、2週間後ぐらいをピークに改善に向かうとされています。

一説には、酒さの体質を持つ人がステロイド剤を常用することで発症するともいわれています。

3-2. 脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎も鼻や頬などの赤みが長期間にわたって引かないことがあり、酒さに似た症状を示します。脂漏性皮膚炎の場合は、頭皮やワキなどにも炎症がでますが、酒さの症状は顔だけに限定されます。

酒さは敏感肌やアトピー・ニキビ肌など、バリア機能の低下することで発症しやすくなりますが、脂漏性皮膚炎は過剰に分泌された皮脂に、マラセチア菌というカビの1種が異常繁殖して起こるとされています。

 

4. 最後に…

お医者さま突然に原因不明の赤ら顔になり、いつまでも治らないのが酒さです。痛みが強いというようなつらさはありませんが、顔という部位に赤みや湿疹が表れたまま消えないというのは、女性はもちろん、男性であっても、とてもつらい疾患です。

可能な限り、早急に改善を望むのは当然のことですが、残念ながら酒さについての研究はそれほど進んでいません。

さらに、酒さはその原因も、発症メカニズムもまだ明確でなく、厚生労働省の治療ガイドラインがないため、現場の医師たちも手探りで診断、治療を行っているような状況があります。

また、複数の原因や症状が複雑に同居することや、原因の違うよく似た皮膚炎がいくつもあることが、さらに混乱に輪をかけています。

あたりまえですが、酒さなのか、違う皮膚炎なのかによって治療法が異なるため、自己判断はおすすめできません。

ご自身である程度の予備知識を持ったうえで、専門医に相談し、コミュニケーションをとりながら、的確な対処をされることが、結局は改善の早道なのではないでしょうか。

 

 

「酒さ」をあきらめかけていた方へ

医師でも診断が難しいとされる皮膚疾患の「酒さ」

原因や因果関係が解明されていないため、医師によって診断が異なることも多く、ステロイド系の塗り薬、レーザー治療、漢方薬などさまざまな治療法を試しても、改善が見られないという方も多いようです。

そもそも「酒さによる肌の赤み」は、血管が炎症を起こすことでの毛細血管の広がりが原因です。

 

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肌の赤みが軽減している画像

 

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【監修者】三宅 真紀先生