はじめに
美容成分として人気の高いセラミド。どうやら保湿に関係しているみたいだし、敏感肌にもいいらしい…。
「でも、セラミドって、ほんとうはどんなものなの?」といった疑問を解消するセラミドの基礎知識をまとめてみました。
セラミドをお手入れに上手に取り入れると、敏感肌のケアだけでなくシワやたるみなどのエイジングケアにも役立ちます。
とはいえ、セラミドは種類が多く、価格もさまざまです。とくに「○○由来セラミド」や「○○型セラミド」が、たくさん世にでているため、何を選べばよいか迷ってしまう方も多いと思われます。賢くセラミドを活用するために、まずはセラミドの基本を押さえておきましょう。
目次
1. セラミドって何? Q&A
Q1. セラミドって、どんな成分?体のどこにあるの?
A1. 肌の表面の角質層に存在し、肌バリアと保湿を支える成分です。
セラミドはヒトの肌に存在する成分で、誰の肌にも存在します。肌の表皮は、厚さが平均0.2ミリの薄いものですが、その一番上にある角質層(角層)の厚さは、さらにその10分の1の0.02ミリ。食品用のラップ程度のとても薄い部分こそが、肌のバリア機能と保湿機能を支えるとても大事な役割を担っています。
角質層の中では、角層細胞が積み重なっていて、その隙間を細胞間脂質が埋めています。角層細胞がレンガだとしたら、そのレンガとレンガの間を埋めるパテのような存在が細胞間脂質です。
まとめ:セラミドは肌の表面の角質層にあり、細胞間脂質の50%以上を占める、大事な「うるおい成分」です。
Q2. セラミドとコラーゲンやヒアルロン酸との違いは何?
A2. 肌表面でのバリアとうるおい保持をするセラミド、肌奥でうるおいやハリを保つのが他の2成分。
まず、存在する肌の層が違います。セラミドは、表皮の一番上の角質層(角層)に存在しますが、コラーゲンやヒアルロン酸は、そのずっと下の真皮部分に存在します。
表皮部分に存在するセラミドの役割は、角質細胞の隙間を埋めて、紫外線やアレルゲンなどの刺激物が肌に浸透しないようにすること。同時に、肌奥の水分が外へ逃げないようにすることの2つです。
それに対して、コラーゲンとエラスチンは肌の真部分でハリを支える柱を作り、ヒアルロン酸は水分を含んで大きく膨らみ、コラーゲンの柱が崩れないように支えています。
つまり、肌のもっちり感やプルプル感を作るのが、コラーゲンとヒアルロン酸。そのもっちり感をキープするべく、肌を守っているのがセラミドです。
なので、乾燥による小ジワ対策なるセラミド。年齢によるたるみやシワ対策なるコラーゲンやヒアルロン酸を使用するとよいでしょう。また、敏感肌やアレルギー肌への対策としてもセラミドはおすすめです。
セラミド | コラーゲン・ヒアルロン酸 | |
どこにある? | 肌の表面 | 肌の奥 |
<角質層> | <真皮層> | |
役割は? | ・肌バリアを形成 | ・ハリを支える |
・肌の水分蒸発を防ぐ | ・肌奥のうるおいを保つ | |
どんな悩みに? | 乾燥肌・敏感肌 | たるみ肌・シワ肌 |
まとめ:乾燥肌や敏感肌をケアするなら、セラミド。年齢によるたるみ、シワをケアしたいなら、コラーゲンやヒアルロン酸を選びましょう。
Q3. セラミドの不足した肌はどうなるの?
A3. セラミドが減少すると肌乾燥が進み、刺激に敏感になります。
セラミドが不足すると、角質層(角層)の角質細胞が乱れて隙間ができるため、下の右図のように肌バリアとしての機能が低下します。
また、肌の内側の水分も肌の外側へ蒸発しやすくなるため、肌の乾燥も進みます。
つまりセラミド不足の肌は、穴の開いたラップのようなもの。穴あきラップでは食品がすぐに乾燥してしまうように、セラミド不足で肌は異物が侵入しやすく、また乾燥も進みやすいのです。
まとめ:セラミド不足の肌のバリアは穴の開いたラップのようなもの。そのままだと敏感肌と乾燥肌になりやすくなります。
Q4. どんなときにセラミドは減少するの?
A4. 年齢とともにセラミドは減少、それによって乾燥が進んだ肌は年齢サインが目立つように。
年齢によるセラミドの減少
年齢と共にお肌が乾燥し、それと共に小じわやたるみが増える…。多くの女性たちに共通の悩みですが、このことにセラミドの減少が大きく関係しています。
子どものときの肌のセラミド量を100%としたとき、20代のときに90%近くあるセラミドが、50代になるとなんと約半分にまで減ってしまいます。
そしてセラミドが減少することで、肌表面の角質細胞がガタガタになり、細胞間に隙間ができることで肌の内側の水分が逃げ出してしまう。これが年齢による乾燥肌と、さまざまな肌悩みの原因となります。
ポイント! 年齢によって減少するセラミドは化粧品などで補おう!
クレンジングや洗顔によるセラミドの減少
年齢以外にもセラミドが減少する理由があります。年齢による自然減に次ぐ、セラミドを減らしてしまう理由は毎日の洗顔とクレンジングです。
クレンジングはファンデなど油性のメイクを溶かして落とすためのものです。セラミドも油性なので、クレンジングによってセラミドが溶け出すことは否めません。
さらに洗顔時に肌をゴシゴシ擦ると角質層がダメージを受けて、さらにセラミドが流出しやすくなります。
対策としては、クレンジグ剤は肌にやさしいクリームタイプやミルクタイプを選ぶこと。また洗顔時には泡をしっかり立てて、角質層に刺激を与えないようにしましょう。
ポイント! セラミドの減少を食い止めたいなら、強いクレンジングは使わない
※セラミドが減少しにくいクレンジング選びの参考記事はこちら
【厳選】赤ら顔おすすめスキンケア3選|正しいスキンケア法徹底解説
温泉で長湯することでセラミドが減少
お風呂でゆったりするのは気持ちがいいですが、手がふやけるほどに長湯をすると皮脂が溶け出し、同時にセラミドが減少してしまいます。
ポイント! 肌がふやけるほどの長湯をしすぎないようにする!
体を冷やすことでセラミドが減少
体温が低下すると血行が悪くなります。血行が悪くなると、新陳代謝が低下して、お肌のターンオーバーが乱れると同時に、セラミドの生成力も低下してしまうのです。
つまり、体を冷やしていると年齢は若くても、中高年のようにセラミド量が低下するということです。
ポイント! 体を温める飲み物、食べ物を摂る! ファッションにも注意!
Q5. 赤ら顔とセラミドの関係は?
A5. 赤ら顔の原因にもよりますが、多くの場合は肌バリアが弱い敏感肌です。
赤ら顔の原因はいろいろありますが下記のものが原因の場合は、ほとんどの場合、セラミドの減少によって肌バリアが低下しています。
<セラミドの減少と関係が深い、主な赤ら顏の原因>
- 敏感肌
- 酒さ
- アトピー性皮膚炎
- ニキビ
- 毛細血管拡張症
酒さ、アトピー性皮膚炎など、上記の肌疾患は広い意味では肌バリア力が機能していない「敏感肌」ですので、セラミドを補って肌バリアを再形成することが大切です。
ポイント! セラミド配合の化粧品で、肌バリア力を取り戻す!
2. セラミドの種類について
セラミドはもともとお肌にあるものですが、その生成力が低下している人はセラミドを化粧品などで補うことになります。
最近ではセラミド人気が高まり、セラミド配合の化粧品も多いのですが、化粧品原料のセラミドにはいろいろな種類があり、さらに各メーカーがいろいろな呼び名をしているため、何を選べばよいのかよくわからなくなる人もいるようです。
特に天然、自然というフレーズが人気が高いことから、ことさらに「天然」「自然」のイメージを強調するメーカーもあるようですが、セラミドに限っていえば「天然」「自然」由来だけが選択基準ではありません。
まずは複雑なセラミドの種類を理解し、自分の肌や好み、使い方によって何を選択すべきかをご理解いただけたらと思います。
2-1. セラミドは原料によって天然と合成がある
まず、セラミドは大きく分けて、天然セラミドと合成セラミドに分けられます。さらに、その中間ともいえる酵母セラミドが存在します。
天然セラミドは動物由来のもの、植物由来のものがありますが、それぞれの原料から抽出されたセラミドです。
合成セラミドはセラミドの分子構造を真似て、化学合成で人工的に作ったものです。これは疑似セラミドと呼ばれ、成分表示にセラミドと記載することができません。
酵母セラミドは、酵母を使って人工的に作られるものです。そしてセラミド配合化粧品の多くは酵母セラミドなのです。
2-2. ヒト型セラミドの正体は、酵母で作るセラミド
化粧品の広告を見ていると、よく目につくのが「ヒト型セラミド」という文字です。もちろん、ヒトの肌から抽出したセラミドであるわけがなく、ヒトの肌にある12種類のセラミドの分子構造と同じものを、酵母によって作り出した酵母セラミドが「ヒト型セラミド」呼ばれています。
酵母セラミドは、天然セラミドなのか?あるいは合成セラミドなのか?という点に関しては議論が分かれており、正直なところ、メーカーによって区分が違います。
酵母で醗酵させるというのは、味噌や醤油と同じだから天然だとする主張もあれば、天然素材から抽出したものではないから、合成だという主張もあります。
その一方で、天然由来と謳っている動物性や植物性のセラミドであっても、天然原料から抽出過程では化学薬品などを用いることがよくあります。それは他の化粧品成分についても同じことがいえます。
つまり、天然由来であるかどうかにこだわることがポイントでなく、原料由来別のセラミドの特徴の方が大事なポイントだと考えられます。
2-3. 原料由来別セラミドの特徴
動物由来セラミド
【成分表示「ビオセラミド」「セレブロシド」など】
馬など動物から抽出されたセラミドです。ただし、皮膚からの抽出とは限らず、馬の場合は多くは脊髄から抽出されています。
馬由来ですから、もちろんヒト型セラミドではありません。なので、馬セラミドがそのまま肌のセラミドになるわけではありませんが、肌のセラミドを合成する働きを活性化してくれるといわれています。
特徴1 ヒト型ではないが、ヒトのセラミドに近い
特徴2 肌にあるセラミドのすべてをカバーする
特徴3 肌のセラミド合成を活性化してくれる
植物由来セラミド
【成分表示「植物性セラミド」「コメヌカスフィンゴ糖物質」「コンニャク根エキス」など】
米やコンニャク、大豆、トウモロコシなどから抽出されたセラミドです。保湿力が高いことが認められていますが、動物由来のように肌のセラミドが増えるわけではないようです。
また、セラミドとは表示されていない場合もあります。例えば…
・コメセラミド ⇒ コメヌカスフィンゴ糖脂質
・こんにゃくセラミド ⇒ コンニャク根エキス
なども植物性セラミドの1種です。
昔から米ヌカで顔を洗うと美人になるといわれたのは、米ヌカのセラミドの力だったのかもしれません。また、コンニャクセラミドはアレルギーになりにくいとして人気があります。
特徴1 水溶性なので、肌への浸透がよい
特徴2 保湿力が高い(合成セラミド、酵母セラミドの方がさらに高い)
特徴3 コンニャク由来なら、アレルギーになりにくい
酵母セラミド(ヒト型セラミド・バイオセラミド)
【成分表示「セラミド2」「セラミド3」「セラミドAP」「セラミドNP」など】
化粧品に使用されているセラミドの多くが酵母セラミドだと言ってもよいでしょう。酵母セラミドという呼び名の他に、バイオセラミド、ヒト型セラミドと呼ばれることもあります。ちなみ、表示が「天然ヒト型セラミド」等であったとしても、ヒト型セラミドはすべて酵母で作られたものです。
「セラミド2」「セラミド3」など、セラミドの後に数字がついているもの、「セラミドAP」「セラミドNP」などのようにアルファベットがついているものも、酵母セラミドで、セラミドの分子構造と働きの違いによって、数字やアルファベットが変わります。
セラミドを肌に与えることでどんな効果があるかについて、データが示されているのは酵母セラミドです。下記のグラフのように、合成セラミド(疑似セラミド)と比較した場合、肌の保水力が約3倍になります。
この実験結果でわかることは、一般的にイメージのよい植物由来のセラミドよりも、実際には化学合成によるセラミドの方が保湿力が高いこと。また、ヒト型セラミドと呼ばれる酵母セラミドはさらに保湿力が高いということです。さらに、この保湿力の高さはすべての酵母セラミドに共通した特徴です。
特徴1 肌の保水力が向上する(合成セラミドの3倍というデータあり)
特徴2 肌のセラミドと同じ分子構造を持つので、肌になじみやすい
特徴3 肌への安全性が確認されている
疑似セラミド(合成セラミド・セラミド様物質)
【成分表示「セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド」など】※セラミドと表示されることはありません。
疑似セラミドは花王が1980年代から研究をスタートし、1987年に開発された、セラミドの分子構造に合わせて、化学合成されたケミカルなセラミドです。
敏感肌やアトピー肌への安全性が確認されていて、安心して使え、保湿力はありますが、肌のセラミドを増やすものではないようです。
疑似セラミドの研究・開発は日本のセラミドブームの先駆者ともいえる画期的なものでしたが、残念ながら疑似セラミドは「セラミド」という表記ができないため、疑似セラミドを使った化粧品の配合成分の中にセラミドの文字はありません。
特徴1 安価なのでたっぷり使える
特徴2 肌のセラミドにはならいが、保湿性が高い
特徴3 肌への安全性が確認されている
2-4. 化粧品によく使われる酵母セラミド=ヒト型セラミドの種類と働き
化粧品を選ぶときに、気になるのがセラミドの後ろにくっついている数字やアルファベットです。
これらの種類と特徴について整理してみました。(数字やアルファベットがついているセラミドは酵母セラミドのみです)
2-4-1. ヒトの肌にある12種類のセラミド
ヒトの肌に存在するセラミドは、理論上は12種類といわれていますが、実際には11種類しか見つかっていないという説もあり、やや混乱しています。
そして、化粧品原料のセラミドとして登録されているものは、
・セラミド1
・セラミド2
・セラミド3
・セラミド4
・セラミド5
・セラミド6
・セラミド9
の計7種類のみです。
セラミド7、セラミド8、セラミド10は原料として表記することができません。
2-4-2. 各セラミドの効果と効能
また最近、セラミドの名称が、従来の数字からアルファベットに変更されました。なので、セラミド2とセラミド従来の数字からアルファベットに変更されました。なので、セラミド2とセラミドNSは同じもので、セラミド3はセラミドNPと同じものNSは同じもので、セラミド3はセラミドNPと同じものです。
年齢と共にいちばん減少しやすいのが、セラミド3(NP)とセラミド6(AP)で、この2つがお肌のアンチエイジングと大きく関係しているとされています。
それぞれのセラミドの名称と効果効能を一覧にしてみました。自分の肌に必要なものが入っているかどうかを確認してご使用ください。
<化粧品によく使用される各セラミドの名称と効能 一覧表>
セラミド1 | セラミドEOP | 外部刺激からのバリア機能をサポートする。 |
セラミド2 | セラミドNSまたはNG | 保湿機能が最も高いセラミドとされている。 |
セラミド3 | セラミドNP | 保湿機能とシワの深さを軽減するアンチエイジング機能あり。 |
セラミド4 | 未確認 | 肌のバリア層を構築し、それを維持する。 |
セラミド5 | 未確認 | セラミド4と、同様の働きをする。 |
セラミド6Ⅱ | セラミドAP | セラミド3(NP)と、同様の働きをする。 |
セラミド9 | セラミドEOS | ※機能がまだはっきりと解明されていません。 |
あとがき
化粧品に配合される美容成分として、女性に人気の高いセラミドですが、その種類と名称は複雑です。
セラミドならなんでもOKにするのではなく、肌悩みが敏感肌なのか、エイジングなのか、乾燥なのかによって、必要なセラミドの種類が変わってきます。
セラミドの基礎知識をしっかり把握して、効果的な使い方をしていきましょう。